西へ西へと甚平は木曽の山を走り抜けて、中津宿の山や谷を走
り やっとやっと美濃の国大井宿に近づきました。
岡瀬沢村へ入るあたりで八重羽のきじを追いつめました。
「ありがたい、やっとやっと」
心ははやりました。鷹も犬も走り続けて体からは血が流れました。食
べ物が少なくなってきました。
逃げて逃げてきた八重羽のきじも姿を見せました。
「殿様ぁ、今度は討てますかなぁ」
家来の問いかけに「みんな、もう少しの辛抱じゃ。頑張ってくれぇ」
疲れ果てた甚平は声を振り絞って家来をはげましました。
「仏様ぁ、助けてくだされや」心の中で手を合わせながら化鳥を追い
つめていきます。
やっとやっと追いつめた所で、ここで気がゆるんでしまったのか悲
しいことが起こりました。
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